2012年5月3日木曜日

組織とソフトウェア開発

最近は、アジャイル開発がSIerの中でもブームになっているが、開発手法だけ真似ても効果が出ないことはソフトウェア開発に携わった人なら何となく感じていると思う。

日本的な組織のSIerが、短納期でソフトウェアを開発するには、ビジネスモデルの変革と、組織改革が必要になる。

個人的には世の中のスピードに対応するために、製造業で起こったようにベルトコンベア式からセル生産方式に変わっていくと思っているし、実際そのようになっている。

システム開発でいういわゆる「上流工程」「下流工程」を別の人が担当する場合、伝達コストと伝達ミスのリスクが発生する。以前のように、長時間かけて業務効率化のための大規模なシステムを開発する場合では、工程ごとの分業制がベストだったのかもしれない。上流工程で要件と、アーキテクチャを凍結した上で、ITゼネコンのトップ企業(以下、プライム企業と定義)が「下流工程を単純化しよう」と考えた仕組みだ。この多重請負の仕組は、プライム企業にとっては最も継続的に利益が入るすばらしい仕組みだった。

ただし、リーマンショックをきっかけに、ユーザ企業のシステム予算が削減されたことをきっかけに、この仕組が機能しなくなった。

あまりにも、多重請負の仕組がうまく回っていたものだから、プライム企業は人の管理と、案件獲得のための営業を専門とする人ばかりになってしまったのだ。しかも、ほぼ全ての人が管理職。組織の高齢化が実務作業をする人ではなく、人を管理する人ばかりになってしまった。

つまり、アジャイル開発をしようにも、実務経験から遠ざかっている人ばかりの組織、および管理職ばかりの組織では、システム開発の実務ができないのだ。結果、協力会社の人材を使わざるを得ない。ただし、案件が継続的にあるわけではない。協力会社の人材は、資金がなくなったらリリースしなければならない。これでは、自社にスキルが蓄積されない。

IT受託開発の売上が減っているため、SIerの組織も縮小せざるを得ない。日本的な組織のSIerが復活するには、管理職の多くの役職を廃止し、システム開発において管理と実務双方を実行するようにする必要がある。経営陣が思い切ってこれをすすめることができるか、それに日本のSIerの将来がかかっている。

「サービスを早く提供すること」「アジャイル開発をすること」は、管理だけする人を減らして、自分も手を動かしながらメンバーを教育していく人材が必要だ。ただ、管理職の多くは、自分で手を動かせない人がほとんどだ。ここに日本的SIerの最大の課題だと思う。このまま放置していると、新興企業に負けて会社が倒産することも現実的になってくる。

 

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