2012年7月16日月曜日

転職しても仕事の本質は変わらない

転職して、2週間が経った。

先週末、部署で歓迎会をしていただき、これで新入社員気分も吹き飛んだと思う。

 

30代半ば。今までの経験を見込まれての入社だ。以前の転職では、若さとポテンシャルを期待されていたが、さすがにこの歳になるとそうはいかない。

前職との最大の違いは、やはり「スピード」だ。7年ぶりに感じるベンチャーのやり方についていくのは大変だが、何とか食らいついているのではと自負している。

 

今回は、転職して感じる下記二点について書きたいと思う。

 

1. 「SIerからSaaSの会社に転職して自分の仕事内容が変わったか。」

2. 「自分のやりたい仕事ができているか。」

 

1.「SIerからSaaSの会社に転職して自分の仕事内容が変わったか。」と言われれば、答えは「No」だ。

アジャイル開発、Excelで設計書を書かない、リリース期間が短い...細かい違いを挙げればいくらでもあります。

ただ、「お客さまに価値ある仕組みを提案、提供する」という観点では、これっぽっちも変わっていない。一方、「社内関係者、チームメンバーと協力してソフトウェアを開発する」ということも変わっていない。お客さまのやりたいことを限られた期間、予算内で遂行するために徹底的に考えて提案する。ゴールを決めたら関係者に納得して動いていただく、という泥臭いことの繰り返し。これらは一切変わっていない。

だからこそ、「SIerでは言われたものを作るだけだけど、WEB系とかネット系で企画から携われるから転職したい」という理由で転職することは危険だと考える。まず、「SIerは、言われたものを作るだけ」という間違った認識が蔓延している。(これは、転職サイトとか人材紹介会社のプロパガンダのような気がする)お客さまのシステムを作るのに「要求仕様書に従って作ればいいんです」なんて言っているようでは、SIer失格だと思う。要求仕様書に対して提案するのもSIerの大事な役割だ。

 

2.「自分のやりたい仕事ができているか。」と言われれば、答えは「Yes」。

私にとって、「自分のやりたいこと」とは「お客さまに全うなシステムを提供したい」ということだ。

逆に言えば、どのようなシステム開発でも自社の都合(例えば、「内部統制で数回の社内の契約レビューをする必要がある」「ソースコードだと分からないから、決まったフォーマットで設計書を書いてレビューしなければならない」「バグ密度が○○/kstepsで基準に達していないから、強化試験を実施しなければならない」)といったお客さまの要望を無視した開発は勘弁してほしい。

お客さまを無視した自社都合な組織はいずれ衰退する。

お客さまの要望(納期、予算、品質)に合った手法を考え、最善の手段を用いてシステムを開発する。「多少のリスクがあっても新しい技術が何らかのメリットがあるなら、積極的に挑戦する」という文化で仕事ができることは満足している。ただ、それに見合った結果を出す厳しさはあるけれど。

 

SIerからWEB系の転職を考えている人は、WEB系企業はバラ色だと思い込まない方がいい。WEB系企業も人材が増え、SIerのような組織化は避けられない。今年は、スピードとそれにマッチした組織を創れる人(これが真のマネージャだろう)が必要とされる時代だ。WEB系企業への挑戦は、SIerで自分のゴールを達成してからでも遅くはない。逆に、SIerで厳しいゴールを達成した人と一緒に働きたいなぁ、と思う今日この頃である。

 

2012年7月1日日曜日

退職、みなさまに感謝!

昨日、某システム受託開発会社を退職しました。

退職にあたり、みなさまから気持ちよく送り出していただきました。

送別会も2回していただきました。

 

やはり、前回大赤字だったプロジェクトを今回は黒字にできたという貴重な経験をしたことは自分にとって非常に貴重な経験でした。昨日、部署全員の前で退職の挨拶、送別会に参加する中、このプロジェクトは様々な方のご支援、ご協力があってこそ、目標を達成できたのだと実感しました。

また、プロジェクトの雰囲気も少しずつ「やればできるんじゃないか」というポジティブな状況になってきていると思います。一度黒字化しても、継続して利益を上げるという次に繋がる仕組みを構築できないと仕事をする上で意味がないと思っています。

お客さまも、見積もり、上流工程を順序立てたプロセスで進めることで、受入試験の手間が減ることを実感していただけたのではないかと思います。ただ、まだお客さまの要望に100%応えられる組織になっているか、といえば、契約、開発プロセスだけをとってみてもまだまだ改善の余地があります。

 

転職する理由は、新しいことにスピーディーにチャレンジしたいことと既存のSIerのビジネスモデルに限界を感じていることです。多くのSIerのビジネスモデル、一括請負のビジネスモデル、協力会社の社員を使って利益率を上げるビジネスモデルは、曲がり角に来ているのではないかと考えます。

では、多くのSIerは、なぜ変われないのか。人月商売という慣習を変えられないのではありません。SIerの経営者もそこまでバカではないと思います。SIerの経営者が従業員の年齢構成に頭を抱えているからです。古くから存在するSIを業とする企業は、40代の社員&管理職が多く、20代が少ない。つまり、人員管理、外注マネジメント、社内調整がメインとなってしまい、お客さまの業務課題を解決するという企業にとって本来生産的な業務を遂行することができません。簡単に言えば、現場から遠ざかっているため、リスク管理、進捗管理(ただ、進捗表を見て確認するといったレベルは除く)ができない人が多いのです。実際問題があっても、現場で通用しない解決策を提示されたり、そもそも起こりうる問題すら指摘できないことが多い。

管理職が多いことで、管理職1人あたりの部下の数が少なくなり、予算や利益目標を達成するためには、協力会社の人員を多くして稼ぐしか会社として成長できなくなります。実際、コアな部分を協力会社のあるメンバーに依存しているプロジェクトは少なくありません。保守契約でお客さまからお金をいただけなくなり、そのメンバーをリリースせざるを得ず、引き継いだ社員が大変な思いしています。システム開発において丸投げをせずに外注管理をするならば、非常に高いマネジメントスキル、技術スキルが要求されます。しかし、そのようなスキルを持った社員はほとんどいません。

 

SIerのやり方が悪いというより、従業員の高齢化、管理職の割合が多くなっていることが問題の根源です。40代以上の社員の意識、行動を変えることは非常に大変です。実際、日本で元気なIT企業の平均年齢は30代前半以下です。計画から実行へ移すスピードが違う。自分もこのスピード感のある企業で働いてみたいと思ったのが、転職する理由の1つです。

転職するにあたってもう一つ重視したのは、組織として成長できる仕組みを経営者が意識しているかどうか。自組織の価値を説明できるかどうか。目先の利益額を増やすために安易に外注していないかどうか。後輩、後継者を育成する仕組みを経営者が意識しているかどうか。

今までの経験を活かして、来月から組織が継続的に成長する仕組み、後輩、後継者を育成する仕組みを創り上げていきたいと考えています。

 

改めて、様々な貴重な経験をさせていただいた前職関係者のみなさま、お世話になりました。

これからもよろしくお願いいたします。